
2026年4月にオープンしたVEGIMO FARM PARK 御代田(ベジモファームパーク御代田)。この場所、オープンへの想いを、ベジモ代表小林寛利に聞きました。

FARM PARKはベジモのサービスや価値を集約したモデル拠点。
――まず、ベジモファームパークとはどんな場所なのでしょうか?
小林寛利(以下、小林) 一言で言えばベジモの「体験農園(貸し農園)」です。そして、自然栽培野菜の生産、加工、スクール、農福連携など、ベジモが行ってきたサービスや価値を集約したモデル拠点でもあります。
もともとベジモは、自然栽培の野菜を育ててお客さんに届けると同時に、畑の空気や畑での学び、土に触れること、土の中にいる微生物、そこに生えてくる草や虫、そして人とのつながり、自然栽培や有機農業にはそういったさまざまな価値があると考えて農業に取り組んできました。ベジモの使命は、そういう価値をサービスとして届けることだと考えて、愛知や長野、広島などでも農福連携や貸農園、グリーンケアといった形で取り組んできました。
ただ、それらをワンストップで、一箇所で体現できる場所がありませんでした。そこで、貸農園もあるし、農福連携もあるし、野菜の生産や加工・販売もあるし、スクールもある、ベジモがやってきたサービスや価値を集約した場所を作ろう、とできたのがファームパークです。

学びや交流の場を積極的に取り入れ、設備含めて農業へのハードルを下げる。
――いわゆる市民農園や他の貸し農園との違いは何かあるのでしょうか?
小林 般的な貸し農園は、仮設トイレやテントのような環境が多く、それが合わなくて、畑に興味はあっても足が遠のいてしまう方も多いと感じています。ベジモファームパークでは、それら設備を可能な限り整えることで畑へのハードルを下げられたら、という思いがあります。
また、学びや交流の場を積極的に取り入れていることも特徴です。
まず、気軽に畑に来る体験ができて、さらに興味を持てば、農業を楽しく続けてもらえるのもいい。小さくても大きくても、どのような形であれ、土に触れ、野菜栽培を楽しんでいただけるように、学びの場やつながりの場も取り入れた、ちょっと新しいかたちの体験農園です。

――御代田町のこの場所に決めた経緯は何かあったのでしょうか?
小林 有機農業や自然栽培というのは畑を集約していかないといけないんです。バラバラに点在してしまうと、慣行農法の農家さんと混ざってしまって、お互いにとって良くない影響が出てしまう。だから、将来的に耕作面積を増やしていけそうで、かつ有機農業を推進できるエリアというのが限られていました。
農業委員会の姿勢も地域によってかなり違いますが、有難いことに御代田町は受け入れてくれる土壌があって、良い場所を見つけることができました。今後、この拠点ができたことで新たな就農者が生まれ、地域の農業を担っていく広がりを作っていけると思っています。
ちなみに、こうした農地の探し方そのものが、ベジモのノウハウの一つになっています。新規就農者や企業さんと組んで新たな農園、ファームパークを作ろうとする際も、「畑の探し方がわからない」「どこに相談すればいいかわからない」という方がほとんどです。ベジモが場所を選定して立地評価、土壌分析や土壌改良を行い、行政手続きも含めてサポートすることで、この春にはじまる千葉での新拠点も契約から約半年でスタートできることになりました。

もっと地域密着、もっと身土不二。地域に密着した拠点を全国に展開したい。
――今後、地域とつながって活動していきたいという思いや展望はありますか?
小林 もちろんあります。ベジモは全国で事業を広げていますが、根本にあるのは地域密着です。野菜を届ける距離をどんどん短くしていきたいというのが一貫した思いで、拠点が増えればその分、より近くの人に届けられるようになる。東京への配送も今は長野や栃木からですが、千葉に拠点ができればもっと近くから届けられる。やっていることは全国展開ですが、考えているのは「とにかく、より近く」ということです。
地域の方に気軽に畑に来てもらったり、マルシェなどに参加してもらえると嬉しいですね。そして、今までベジモ有機農業スクールから新規就農者が多く生まれているように、今後ファームパークのコミュニティの中からも新規就農者が生まれ、その地域の農業を担う人が育っていくこともあると思っています。地域なくしてベジモはありえない、それほど地域密着は大切にしていることです。
その根幹にあるのが、「身土不二」という考え方です。土と身体は二つにあらず——つまり、自分が暮らす土地で育ったものを食べることが、人の健康と自然のあり方にとって本来の姿だという思想です。ベジモを立ち上げた当初から、この言葉がすべての出発点にありました。「身土不二」をサービスで体現したい、と「地域密着野菜の宅配ベジモ」というかたちが生まれたんです。創業して農家を始めた年から、お客さんを畑に招いてバーベキューを年に2回は必ず開催して、野菜を一緒に収穫して、案内して、共に食べる、そういうことをずっとやってきました。 「どうして地域を限定しているんですか?」と取材でよく聞かれましたが、私の答えはいつも同じでした。「愛知と岐阜・三重・静岡の四県に届けているのは、むしろこれでも広すぎると思っている。本来は、豊川で作った野菜は豊川の人が食べる、豊橋で作った野菜は豊橋の人が食べる、そういう流通が理想なので、もっと限定したいくらい」と。働く人を増やして自然栽培を広げていくためにやむを得ず近隣四県まで広げているに過ぎません。それもまた、身土不二の思想に根ざした判断です

野菜もあちこちに動かされたらクタクタになってしまうと思うのです。
――もっと広げたら、という話は出なかったのですか?
小林 よく言われます。「海外で売れば絶対に売れる」と。たしかに、輸出すればもっと儲かる会社になれると思っています。ただ、それだけはずっとやらずにきました。身土不二の考え方からすると、ものを遠くに運んでエネルギーを消費することへの違和感がずっとあって。人間だって出張が多いと疲れるじゃないですか。野菜だって、あちこち動かされてクタクタな状態で食べられてしまうのは、せっかく健康に育てたのにかわいそうだと思っているんです。温度変化もあるし、移動のストレスがない状態が野菜にとっても一番いい。
その鮮度が、実は農法以上に味や栄養に影響しているとも思っています。遠くから運んできた野菜より、地元の旬の野菜を食べるだけでも、味も体への影響もかなり違う。その究極が、自然栽培で自分で作るということです。だから、野菜を作って届けることを続けながら、同時に自分で作れる人を増やしていくことにも力を入れています。
――確かに、自分で栽培できるといいですね!
小林 とてもいいと思っています。ベジモの特徴として、大学との共同研究や資材会社との研究を通じて、これまで感覚的と言われてきた自然栽培という農法を科学的に捉えて、誰もがわかりやすく実践できるようにする取り組みをずっと続けてきました。だからスクールの満足度も高く、テキストとして体系化できていると思っています。
――貸し農園と別にスクールもあるのですね。
小林 はい。スクールはしっかりとした学びで、貸し農園はその簡易的な内容を学べ、実際に実践する畑もあるので、庭や畑がない人も始めやすいと思います。スクールを卒業してベジモで働いたり、独立して農家になって、ベジモに野菜を出荷してくれたりと、輪が広がっています。


まずは相談しに行こう、見学に行こう、と思ってもらえる存在になりたい。そして、生きた土壌を未来に残していきたい。
――本当に、野菜栽培のあらゆるハードルを下げて、畑がもたらす豊かさ、喜びを分かち合いたい、という思いが伝わりますね。この場所が、五年後・十年後、こうなっているといい、というビジョンはあるのでしょうか?
小林 まずは、農・畑に興味を持ったらすぐに気軽に来てもらえる場所になれたら良いなと思います。「農・畑に興味があるけど、どうすればいいかわからない」という時に、「ベジモが近くにあるから、まず相談しに行こう」「見学に行こう」と思ってもらえる存在に、まずはなりたいと思っています。
そこから、本格的にやりたい人も、小さくやりたい人も、それぞれが続けていけるようにベジモができることをこの拠点をベースにやっていく。
最終的には、地域に生きた土壌が残り続け、美しい田園風景が、未来の子どもたちにずっと引き継がれていくこと。栄養のある良い土壌で育った野菜に困らない、そういうものがいつでも手に入る世の中が、各地にこういう拠点ができることで作られていけばいいと思っています。
身土不二——土と身体は二つにあらず。その言葉が示すように、人が暮らす土地の土が豊かであれば、そこで育つ野菜も豊かになり、それを食べる人も豊かになる。そういう循環を、この場所から、そして全国の拠点から作り続けていきたい。そんな未来を子どもたちに残していくことが、ベジモの願いです。



株式会社ベジモ 代表取締役 小林寛利
2008年に愛知県豊川市で新規就農しベジモを立ち上げる。その後、移動販売、6次産業化による農家レストランの運営、農福連携を栃木県佐野市、広島県広島市、東広島市、廿日市市、愛知県豊橋市に展開。2022年からは長野県佐久市にグループ本部機能となる株式会社ベジモを設立し、その後北佐久郡御代田町にVEGIMO FARM PARK MIYOTAを設立。
VEGIMO FARM PARK MIYOTA(ベジモファームパーク御代田)
VEGIMO FARM PARK は、未経験の方から就農希望者まで、それぞれのライフスタイルに合わせたかたちで自然栽培の野菜づくりに取り組み、シンプルで豊かな食のある暮らしを体感できる貸し農園・コミュニティスペースです。
お問合せ(TEL: 0267-31-5514 平日8:30~16:30) Web